確率についての豆知識
[はじめに]
ポケモンをプレイしている方であれば色違い厳選や個体値厳選、対戦で命中不安定技を使用したり、、など確率が絡む試行をしたことがある人は多いのはないでしょうか。しかし、特に低確率のものだと厳選にかかる時間を予測しにくい、対戦の再現性が低いなど安定性を欠いてしまいます。
本記事ではそんな確率に支配された試行を、95%の確率で最低でも1度は成功するために必要な試行回数などについて考え、簡略化して誰でも暗算可能な概算方法を紹介します。
イントロが長く本編までは長文かつ理解するには高校数学の知識も必要なのでざっくり読みたい方は太字にだけ注目していただく、あるいは結論の部分だけ覚えておくだけでも有益かと思います。ポケモン以外でもギャンブルやその他ゲーム、日常生活にも生かせると思います。
[例題]
まず、一つの例題について考えてみましょう。
「卵を孵化した時、色違いポケモンが産まれる確率は1/512であるとします。あなたは最低でも1匹の色違いポケモンを手に入れるために、この卵をいくつ孵化すればいいと考えますか?」
僕の予想ですが、多くの人は「512回孵化すればいいだろう」と考えたのではないかと思います。ではここで実際に「512回孵化した時に少なくとも1匹は色違いポケモンが産まれる確率」を求めてみましょう。
まず孵化した512匹全てが通常色である確率は
(511/512)^512 ≒ 0.36752
そうでない場合の確率が求める答えなので
1 - 0.36752 = 0.63248
以上より、「512回孵化した時に少なくとも1匹の色違いの個体が産まれる確率」は63%程度です。ではここで、ポケモン対戦ガチ勢の方に質問します。命中率63%の技を積極的に採用したいと思いますか?、、答えはNOだと思います。対戦をやっていない方でも63%は思ったより低くて信頼できないなという感想をお持ちではないでしょうか
当然ですが、100000000000000回孵化しても理論上は厳密な100%には達せず、1匹も色違いを得られないことだってあり得ます。
しかし、63%では信用できないけど95%なら妥協できる、と考えられる方は多いのではないでしょうか。そこで今度は逆に、 「95%の確率で少なくとも1匹の色違いのポケモンを孵化するために必要な孵化回数」を求めてみます。
p(=1/512)を一回の試行当たりの成功確率
nは試行回数
a(=0.95)を少なくとも1度成功する確率
とすると以下のように式変形できますね
※青の矢印は気にしないでください(ワードの改行マークです)
ここで、a=0.95, p=1/512を代入するとn≒1532となります。
つまり、1532回孵化すれば95%の確率で少なくとも1匹の色違いを手に入れられる、といえます。どうでしょう、思っていたより試行回数を稼がないといけなくてがっかりされたかもしれません。実際の数値を使って考察したのでこの1532回というのは色違い孵化厳選する際の有用な一つの目安と言えると思います。
しかしどうでしょう、今回は1/512で計算しましたが、数値が異なると到底暗算できないような計算を再度行わなくてはなりません。本編ではあらゆる成功確率でも利用可能な「95%の確率で少なくとも1度は成功するために必要な試行回数」の概算方法を紹介します。イントロが長くなりましたが、次からが本編です。
[本編]
先ほどのような1/512で成功する試行を512回行えば少なくとも1回成功する確率、サイコロを6回振れば1の目が少なくとも1度は出る確率、コインを2回振れば少なくとも1度は表が出る確率、、、などについて今度は一般化して考えてみましょう
上の例文は全て「確率pで成功する試行を1/p回行った時に少なくとも1回は成功する確率」で表せます。この確率を求めてみると
f(p) = 1 - (1-p)^(1/p)
となりグラフは以下のようになります。(https://www.symbolab.com/)
※横軸:p 縦軸:f(p)
コインの例であればp=0.5なのでf(0.5)=0.75
サイコロの例であればp=1/6なのでf(1/6)≒0.67
先ほどの色違い厳選の例であればf(1/512)≒0.63
ここでpを0に近づけた時の極限が気になりますね
証明は省きますがグラフを見ていただければ分かるように単調増加であり、0≦p≦1の範囲ではf(p)≧0.63212となります。
つまり、何が言いたいかというと「確率pで成功する試行を1/p回行えば63%以上の確率で少なくとも1度は成功する」と言えそうですね
さらに、確率pで成功する試行を2/p回、3/p回行った時を計算してみました。
① 2/pのとき
f(p) = 1 - (1-p)^(2/p)
※横軸:p 縦軸:f(p)
②3/pのとき
f(p) = 1 - (1-p)^(3/p)
※横軸:p 縦軸:f(p)
同様に2/pのときも3/pのときもグラフを見ていただければ分かるように単調増加であり、0≦p≦1の範囲ではf(p)≧0.86467、f(p)≧0.95021となります。つまり
「確率pで成功する試行を2/p回行えば86%以上の確率で少なくとも1度は成功する」
「確率pで成功する試行を3/p回行えば95%以上の確率で少なくとも1度は成功する」
ということもできます。
[結論]
「確率pで成功する試行を1/p回行えば63%以上の確率で少なくとも1度は成功する」
「確率pで成功する試行を2/p回行えば86%以上の確率で少なくとも1度は成功する」
「確率pで成功する試行を3/p回行えば95%以上の確率で少なくとも1度は成功する」
[応用例]
例1
麻痺状態のポケモンが痺れて動けなくなる(確率25%)
4ターンあれば63%以上の確率で少なくとも1度は動けない(1/p = 1/0.25 = 4)
8ターンあれば86%以上の確率で少なくとも1度は動けない(2/p = 2/0.25 = 8)
12ターンあれば95%以上の確率で少なくとも1度は動けない(3/p = 3/0.25 = 12)
(pが大きくなるほど実際の確率とのずれが大きくなるので注意)
例2
確率1/512で色違い個体が産まれる卵の孵化作業であれば
512回孵化すれば63%以上の確率で少なくとも1度は色違いがうまれる(1/p=512)
1024回孵化すれば86%以上の確率で少なくとも1度は色違いがうまれる(2/p=1024)
1536回孵化すれば95%以上の確率で少なくとも1度は色違いがうまれる(3/p=1536)
(pが十分に小さいため、例題で考えた時の結果とかなり酷似していることを確認していただけると面白いと思います。)
などと応用できます。63,86,95の数字はpが0に極限までに近い時の数字ですので実際の応用例ではpが大きくなるほどこの極限値よりも大きくなります。ただ、暗記しておくと簡単な計算だけでいいというメリットは十分に大きいではないでしょうか。
[まとめ]
いかがだったでしょうか、自分は今回久しぶりに高校数学に触れて、極限や微分など忘れかけていることを自覚し頭の衰えを感じています。(計算面倒なのでツール使いました)
今回はリハビリを兼ねての計算・投稿なので間違いや疑問点がある記事だったかもしれません。その場合はじゃんじゃん教えていただきたいです。
ポケモンと数学を絡めたテーマはかなり興味があるので、今後も何か気づきや発見があれば数学よりなテーマでも投稿したいと思います。